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激動の2019年、第一回公演を経て。

2019年ももう12月。「師匠も走る師走」。ありがたいことに私たちアヴァンギャルド×コンプレックスも第一回公演を終えたのちすぐに次なる現場へと散っております。ここで今年のまとめとして、第一回公演「COUPLES 冬のサボテン」に走り回った本年を振り返ろうと思います。

 

始動した2月。
何事もスタートダッシュが肝心!

第一回公演を鄭義信さんの名作『COUPLES 冬のサボテン』に決めて、まず最初に動いたのは”助成金”に向けてだった。
とにかく「チケットの高い演劇はコリゴリ。もっと手軽に!」という思いのもと動いていた私たちにとって助成金は必須だった。
とはいえ、沢山の先輩方に相談しても「立ち上げ公演に助成金はおりない」と言われてしまう。それはもし自分が交付する側の立場なら当然のことだと思う。どこの馬の骨かもわからない団体に大事なお金を出すなんてもってのほかだ。

しかし、それと諦めるのはまた別問題。「”やる”か”やらない”で迷った時、絶対に前者を選ぶ。」これは僕(岩男)が生きる上で心がけていることであり、そっちの方が何かと失敗しても気持ちがいいのだ。
ということで、死ぬ気で人生初めての企画書製作に勤しんだ。仲間達はもちろん、沢山の大人達にもなんどもチェックしてもらい、なんとか納得いく企画書を完成させた。

ここだけの話、沢山の団体・法人に企画書を提出しました。
その中で”公益財団法人アサヒグループ芸術文化財団”さまが目を留めてくださり、ご助成頂いた。
私たちのような未熟者に手を差し伸べてくださったその心意気に感謝が尽きません。

また、企画立ち上げ段階から参加してくださった作劇の鄭義信さん、作曲の中村 中さん、後援してくださった我らが新国立劇場演劇研修所に金子ボクシングジムさま、スペシャルサンクスの青山吉良さん。本当にありがとうございました。みなさまの助力がなければこの企画がこんなに沢山の人たちから興味を持ってもらうことはなかったでしょう。

まさかのまさか、、監修参加、鄭義信さん!!!

この作品において最も大きい衝撃はここではないだろうか。

第一回公演「COUPLES 冬のサボテン」は
作 : 鄭義信
演出 : アヴァンギャルド×コンプレックス

で作り上げる予定だった。
同研修所で同期の私たち4人 岩男・髙倉・永田・中西は、お互いの良いも悪いも知り尽くした仲。お互いに喧嘩しあってでも妥協なく探求し、立ち上げ公演を成功させるつもりだった。
そんな志を持ち3月から互いのスケジュールの合間を縫って稽古してきたが、やはり4人の群像劇を4人で演出しながら作るのはとても大変なことだ。俳優が演じながら客観性をもってシーンを構築するのはとても難しく、そもそも我々に演出のノウハウは無い。時にスペシャルサンクスの青山吉良さんを稽古場にお招きし、シーンの感想を求めると、とっても芝居が立体的に立ち上がってくる。皆の心の中に「やっぱり演出家の存在は大きいな…」という想いがチラついていた時期だった6月。

偶然か必然か、僕(岩男)はその時 鄭義信さん演出作品「エダニク」の衣装を担当していた。
その現場の中で鄭さんは「サボテンどう?」と、僕らのことをとても親身に気にかけてくださっていた。
僕は「なんと、あのTENGAさんが協賛してくれることになりました!」や、「クラウドファンディングに挑戦します!」などとその都度おきたことを報告していた。

そんな時、

「そっか。。どうしよう、ちゃんと名前出して一緒にやろうかな。」
という衝撃的な一言が鄭さんの口から出た。

僕はその場で判断することができず、すぐに鄭さん作品「赤道の下のマクベス」でも共演したメンバーのヨシオ(中西)に電話した。

「どうしよう!!とんでもないことになった!!!」

鄭義信さんといえば僕も代表作『焼肉ドラゴン』を観て以来 大ファンの超ウルトラ級の演劇人だ。
そんな鄭さんが僕たちのような未熟も未熟な若輩団体の立ち上げ公演にガッツリ共作してくれると言うのだ。
しかし鄭さんは、、なんと言うか、”気持ちの人”だ。半端な感覚で提案してないことはよくわかっている。本気なのだ。

「海史、お願いしよう」
ヨシオは少し迷った挙句に決断した。
「立ち上げ公演は4人でぶつかり合って作ろうぜ!」という僕たちの想いはとても大切ではあったが、あまりに状況がスペシャルだったのだ。

<作・監修 : 鄭義信>
そうして鄭さんは「監修」という形でこの作品にもう2つも3つも深く関わることとなった。
さらに聞けばこの『冬のサボテン』は鄭さんの作品の中で最も多く再演されていながら、自身で手がけたことは無いそうだ。(初演は本人出演:べーやん)
また、鄭さん演出経験のある岩男と中西は知っている。。鄭さんが”世界で二番目にしつこい演出家”であることを。。。。

地獄か天国か、、クラウドファンディングで見えるもの

時は8月・9月。
稽古も10月の本稽古を残し、いわゆる公演の裏方準備としてはピークの時期だ。

そこで私たちの大博打、クラウドファンディングが始動した。
が、しかしそこに関しては丁寧に振り返ってるのでこちらを参照いただければ↓

クラウドファンディング達成!道筋を振り返る。

つい先日リターンを全て送り終えました。
ご支援頂いたみなさま、本当にありがとうございました!

どれだけ周りを飾れど勝負は作品の質!本稽古開始!!

クラウドファンディングも無事達成し、残すは本稽古のみとなった。

3月から4人で戯曲を読解し、セリフを覚え作品を自分たちなりに解釈し、立ち稽古である程度動きもつけていた。
その準備してきたものを大切にしつつ柔軟に鄭さんとの稽古に挑んだ。

そしてみなが思った。
「マジで事前稽古しといてよかった、、、」

鄭さんは作者だ。本を書いた本人だ。
この作品で伝えたい根っこを持っている。
そんな鄭さんの演出は強烈で、僕たちが作り上げていたものを良い意味でガシガシ崩していく。
僕たちも鄭さんのオーダーや方向性に応えつつ、”生きたキャラクターでありつづける”ことを手放さないように奮闘した。

本当に大変で幸せな1ヶ月だった。
参加してくれた大江晋平くんも真面目で素敵な前向きボーイ。僕たち4人も自分たちでしか作れない関係性や稽古スタイルで時にぶつかり時に励まし合いながら支え合い、それを鄭さんが優しく包みながら熱を投入してくれていた。

僕は自分の出番を待ちながらかつての同期が鄭さんにボコボコにされてる稽古をみていてフと「ここは今、日本でイチバン幸せな稽古場だ」と思った。
それくらい創作意欲に満ちていて、かつ柔らかい稽古場だった。

とはいえ、僕たち4人は出演俳優でありながら制作や他の分担作業がある。
時に何人か体調を崩してぶっ倒れたりもしつつ、新たにメンバーに加わった段裕之、田村彩絵、小園優、あすとろ。そしてスタッフさんたちの尽力もあり、なんとか第一回公演は初日を迎えることができた。

「観てナンボ!」これが舞台の良いとこ辛いとこ。

肝心の本編!!!

は、文章に起こすものでも無いかな。と思う。
カッコつけて言うならば「全ては作品で語っている」のだ。
カーテンコールで色々おしゃべりするのが好きでは無いように、芝居の後に何かを付け足すのはあんまり素敵なものじゃないなと。

評判は上々!と言いたいところだが、それは観てくださったみなさん1人ずつのことなので何とも言えません。

しかし、当初350を目標としていた来場者数は蓋をひらけば約570名。
当日券で飛び込みの方も多々いらっしゃり、何名かの方を泣く泣くお断りしてしまうほどの盛況となりました。
これもSNS等でこの作品を拡散してくださった方々のお力添えあってのことです。

次はもっと集客力をつけて2週間公演やりたいもんです。。

 

寂しがる間も無く次へ!地獄の野外公演!!!

ただいま、代表の岩男(私)は、追われています。

第二回公演の企画書に。

第一回公演『COUPLES 冬のサボテン』は言うならば”誕生”。次は”広がり”で勝負したいのです。
死にそうなほど忙しかった初日の直前、当日パンフレットやチケット印刷に鄭さんからの芝居のダメ出し消化で心身パンパンななか、ダイナマイトなような第二回公演の仮チラシを完成させました。

我ながらヤベェ企画です。

『三文オペラ』という超大作をさらに改変。そこに音楽劇・大人数という超高ハードル、そして駄目押しの”野外劇”。
自分でもチビりそうですが、ワクワクでアタマが吹っ飛びそうです。

この仕事をしていく上でたくさん大切なものがありますが、最も大切なのは”ワクワク”だと思います。
第二回公演にもそれを詰め込むつもりです。

ちょっと風呂敷がデカすぎて来年に公演として打つのは難しいかと思いますが、初動はお見せできるかと思います。
乞うご期待くださいませ!!!!

ではみなさま、良い年末を過ごしてくださいませ。
団体として、宝物となった1年間でした。

 

アヴァンギャルド×コンプレックス 代表
岩男海史

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