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激動と沈黙の2020年を振り返る

“激動の1年”にもほどがある

こんばんは、岩男海史です。

2020年も終わりますね。
毎年「激動の!」とか「超〇〇な1年だった!」とか言いがちですが、今年はちょっと洒落になりませんでしたね。

かといって今振り返って”残念な年だったか?”と考えると、そうではなかった気がします。

確かに仕事面やお金に関して大変な事は多々ありましたが、その分いろんなことを見つめ直す機会もあり、なにより最高に緊張感のある1年でした。
ただ、稽古後の飲み会や終演後の面会、友人たちとの食事会が絶たれたのはちょっとこたえます。そろそろこの辺で手打ちにしないかコロナ君。

師匠も走るバタバタの師走ですが、この場にて演劇団体アヴァンギャルド×コンプレックスの2020年を振り返りたいと思います。
とはいえ、今年こんなことになっちゃいまして、当団体の振り返りだけだとあまりにペロンと終わってしまうので、岩男個人の事も踏まえてこの場にて忘備録を記させていただきます。

 


1~3月:
岩男の鄭さん続投 やっぱり鄭さんに涙は欠かせなかった

今年の始まりは去年末より稽古インしてました『シアターコクーンレパートリー「泣くロミオと怒るジュリエット」』の年明け稽古から始まりました。

昨年のアヴァンギャルド×コンプレックス第一回公演『COUPLES 冬のサボテン』で作・監修という形でみっちりお世話になった鄭義信さんの新作です。ずいぶん前に『冬のサボテン』の諸々交渉で鄭さんとお会いした時に「海史~実は今度男だけでロミジュリやろうとおもうんだよ~」なんて話をしまして、それが実現した今作。ちゃっかりサボテンからの続投をお声がけいただき光栄でした。作品は類にもれず超名戯曲。やっぱ鄭さんすごい。

ジャニーズWESTの桐山照史さんを座長にトンデモメンバーが揃いまして、連日の汗だく稽古とアフタービールは最高の日々でした。
そんなキラキラギラギラした日々の中うっすら、ほんのうっすらニュースで“ダイヤモンドプリンセス”というワードをなんとな〜く耳にする程度でした。「わ〜なんかこえーなぁ」と。

初のシアターコクーンは鮮烈で、鳴り止まないカーテンコールとスタンディングオベーション、そして毎公演 客席一番奥に立ってる鄭さんが泣いてる姿が脳裏に焼きついてます。本当に幸せな日々でした。

日に日に、客席のマスク率が上がっていきました。
日に日に、プロデューサーさんが真剣な剣幕で電話してる姿をよく見かけるようになりました。

そして僕たちは本番以外の目的で劇場に集まりました。
小学生の頃、9.11で学校に着くやいなや体育館に集められた日を思い出しました。
私服姿の全キャストスタッフが客席に集まり、いろんなお話をしました。
たくさんのマネージャーさんもいらして、、大人の涙を久々に見た日でした。
なんで自分は泣いてないのか不思議でした。

東京公演を折り返したあたりで、残りの全公演中止が決定。

しかし僕たちには大阪公演がありました。
いろんな事情があるので細かくここにはかけませんが、
その後大阪公演の実現に向けて激闘しましたが、、そちらも全公演が中止になりました。

本来なら昨日のダメ出しを終え、2時間後の開演に向けてアップをしている時間帯に私服で劇場に集まり、プロデューサーさんの話を聞くことになりました。

あの時の鄭さんの顔が忘れられません。
僕は自分の出演する公演が中止になったにもかかわらず、鄭さんの悲しみを見てると自分は他人事のように思えてしまって。僕がお世話になってる鄭義信さんは、これだけの想いを乗っけて芝居を作ってるんだ。だからこんなに悲しいんだ。だからあんな芝居が作れるんだ。

僕は鄭さんのことがさらに好きになり、確かその翌日くらいにフと涙が出てきたのを覚えてます。

メンバーの中西が出演させて頂きましたパルコプロデュース『ピサロ』髙倉が出演させて頂きました こまつ座『きらめく星座』もコロナの影響で公演中止になってしましました。

 

4月:こんにちはウィズコロナ 精神と物質の断捨離

自粛中はベッタベタですが断捨離の日々。予定していた衣装作も飛んでしまい暇暇な日々。
事務所の先輩がCMで大活躍してます某フリマアプリに登録して片っ端から辛口選定しましたところ、僕の平均月収を超える売り上げが出ました。。4月を乗り越えることができる嬉しさと少しばかりの情けなさを携えて5月に向かうわけです。

この時期「自分は本当に何がしたいのか?何が必要なのか?誰と居たいのか?」そんなことを見つめ直した人も多いかと思います。SNSでは”ご報告”から始まる書面画像を沢山見かけました。コロナ破局もあればコロナ婚もありました。僕もそんなことを考えてたわけですが、それが数ヶ月後ヘンテコな形で姿を表します。

とにかく空虚で、でもどこか必要性のある1ヶ月でした。

(↑上の画像は、フリマアプリの売上金ではしゃいで買ったプロジェクターです。起動音の可愛さに大枚はたきました。)

 

5月:持つべきものはアヴァンギャルドな仲間たち

大規模な断捨離も1ヶ月もすれば大方片付きまして、ただただ暇してました。
多少はギター弾き始めてみたり、気になってた映画観たり戯曲読んだりしましたが、まぁそんなんは一時的なもんでして。

やっぱり期日的な何かが迫ってないと燃えない気質なんだと思います。忙しさにゾクゾクアタフタしたいんです。
そんな僕は、今思えばあの時期少し腐ってた気がします。

世の俳優やタレントさんがSNSやYOUTUBEなどオンラインで表現の場を必死に探している姿も、なんだか斜に構えて受け入れようとしませんでした。
SNSも完全にシャットダウン。(←これに関しては精神衛生上とても良いと今でも思います。)

そんなとき、「海史、なんかやろうぜ」的な電話をかけてきたのがメンバーの中西。いつもこういう連絡は彼です。

そこからアマノジャク的に避けてた”zoom会議”なるものに着手しました。
やー、すてたもんじゃなかった。こんなに自分が人との関わりを求めていたんだとビックリしたのを覚えてます。

そこから「今何ができるか?何をすべきか?」をアヴァンギャルドメンバーだけでなく、その時集った仲間たち10人ほどで2,3日に1回のペースでオンライン会議を行いました。ここらへんから個人的にはコロナで凍結していた脳のクリエイティブな細胞君たちが動き出しました。

また、超ラジオっこの中西くんは『ラヂオ・アヴァンギャルドL×R』というネットラジオを始めました。彼の謎の行動力は独特で面白くて制御するのが大変です。僕も毎週出演してます。アーカイブも全て残ってますので、もしよかったら聞いてみてください!

『ラヂオ・アヴァンギャルドL×R』配信ページ

 

 

6月:初の映像作品 当時一番欲しかったものは「呼吸」

5月から始まったオンライン会議はいろんな議題や課題を何周もグルグルして、ようやくひとところに着地しました。
停止してたSNSを再稼働して、良くも悪くも世の中の流行やヘイトを沢山嗅ぎ回ってアンテナピンピンな日々でした。

そして製作が始まりましたアヴァンギャルド×コンプレックス初の映像作品、タイトルは『呼吸』
当時僕たちが最も自分たちに、今の世の中に必要なんじゃないかと思ったものは“呼吸”でした。

主演はメンバーの永田涼。いつもスチールビジュアルでお世話になってますカメラマンの名児耶洋さんを撮影に迎え、自分たちで物語の筋をゼロから話し合い脚本構成、メンバー中西の作詞した歌にミュージシャンの道塚ななさんの曲を乗せたテーマ曲「呼吸」を作り、僕たちが大大大好きな文学座の浅野雅博さんに出演していただきました。

何から何までが初めてで刺激的な創作は今後の僕たちにとって忘れられない体験でした。ゼロイチ最高。

 

↓7月へ続く。

 

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