9/3 Baobab「FIELD」
終演後の興奮を切り取った一枚
9月3日、吉祥寺シアターにてBaobabの「FIELD」を鑑賞した。
僕は演劇を主戦場にしているにも関わらず、観に行くなら、演劇公演よりもダンス公演の方がワクワクするタチなので、今回、非常に楽しみにしていた。
結果、最高だった!
上演時間が何分だったのか、それすら意識から遠のいていたので分からない。上演中は変な意味ではなく、股間にものすごく響いてきた。ずっと下半身から腰回りにかけて、力が入りっぱなしで観ていた。
計算され尽くしたフォーメーション。
ギンギンになっているダンサー達。
頑張らないことを頑張っているダンサー達。両タイプのダンサーさんが混在してる感じがとても良かった。
舞台上の至る所でドラマが起こっているので、観客は全てを汲み取ることができない。でもそれもいい。観客に「どこを観てもいいよ」って委ねてる感じ。凄くいい!
僕はこの作品から「2021」への危機感をものすごく感じ取った。
日本が「2020」に向けて動いているのはいい。それは別に構わない。
でもそこから先のヴィジョンが全く見えない。恐ろしい。
そこに対する危機感なのか、テーマは何でもいいのだが、何らかの危機感が身体からほとばしってるダンサーさんは最高。すげえ。見てて超楽しい。
何かのタイミングでコラボレートをしたいので、個人的にすげえって思った方たちの名前を勝手にあげていく。(気を害させてしまったらすみません。)
Baobabの振付・構成・演出を担当。もう、全てが圧巻!ソロダンスが始まった時の空間の支配の仕方、最高。見えないものを無理して見ようとしない、頑張らないということを体現なさっている方で、ものすごく真実味があった。見えないものを見ようとはしないけど、見えてるんだよなあ。
個人的に中盤、下手前方で踊られている時に確か左手の中指と薬指がチョチョっと動いたあの瞬間の手の個性が最高だった。個性って出そうとするものではなく、出るものだね。最高!近藤良平さんを感じた。笑
鋼鉄の肉体。めちゃくちゃいい。今回、観ながら考えていたのは、もちろん柔と剛を兼ね備えてるのが最強だとは思うんだけど、どちらかに特化しているのもまた最強ってこと。中村さんは剛に特化してる感が凄くいい。何か巨大なもの、あるいは何らかの障害に立ち向かう時に、肉体で弾き返す感じ。だから観客としては良い意味で余裕に見えるし、自信とか根拠を強く感じる。目がギュンギュンになってないのが良かった。凄く冷静だったと思う。
・中川綺音さん
非常に女性らしい。女性陣の中でダントツに女性らしさを感じた。それが集団の中で埋没していなくて、とても際立っていた。中村さんが剛なら、中川さんが柔に特化してるって感じ。障害を柔らかく受け流していく。でも受け流すというのは、さらっと受け流すって意味じゃなく、しっかり負荷がかかった状態で受け流していくから、その姿が非常に麗しい。
(実は6年前に、桜美林大学の素晴らしき青春という企画でジョージ・オーウェルの「動物農場」を演劇版とダンス版で上演した時に、僕は演劇版に出演していて、中川さんはダンス版を振付していたのです。僕のことなんか覚えてないと思うけど。笑)
2012年「動物農場」でも激走の私。
そして最後は我らが植田崇幸。
僕がおそらく一番尊敬している表現者。植田崇幸。
この人の内に秘められた衝動、エネルギーは本当にすごい。人を動かす。
何様って話だけど、植田さんが着実に階段を上がっていく姿が本当に嬉しい。
この人の凄さは、圧倒的な没入力。ないものを「ある」と言い切る説得力。野獣。本当にスリリング。人間ジェットコースター。空間に圧倒的な危機感をもたらす。
彼の真似をすることはできないけど、彼の持っているものを自分のものにしたいって常々思ってる。
本当にコラボレートしたい。
今回「FIELD」を観ていて感じたのは、まずは足腰と体幹の強さなのだなと。そしてそれは何事にも共通するなと。
足腰・体幹の強さがないと表現の粘りが出ない。
そして表現の粘りがない人は作品の隙になる。
本当にね、観客は細かいところまでめちゃくちゃ見てる。特に隙にめちゃくちゃ目が行く。横で最高表現が行われていても、後ろで隙のある動きがちょっとでもあるとどうしてもそっちに引っ張られてしまう。
それは個々の危機感、作品への切迫感があるのかないかって部分にも関わってる気がする。
凄く残念な瞬間、もったいない瞬間もあったけど、それは自分への戒めとして心に留めておきます。
でも総じて最高でした!
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