1. HOME
  2. 特集
  3. 其の名は髙倉。【髙倉直人インタビュー】

SPECIAL

特集

其の名は髙倉。【髙倉直人インタビュー】

第1回公演に向けて本格始動。“まずは私たちをを知ってほしい”

今回は本格始動にあたり、まずは私たちを知って欲しくセルフインタビューを開催しました。
今回はチーム随一の常識人?『髙倉直人』へのインタビューです。

アヴァンギャルド×コンプレックス
『演劇は人を繋ぐ』を理念に様々なコミュニティや地域と関わりながら演劇の可能性を模索することを目指す演劇団体。新国立劇場演劇研修所第10期修了生の中の4人により設立。演劇の枠を超えた表現を得意とする。
第一回公演“LOVE×コンプレックス”『COUPLES 冬のサボテン』
2019年10月31日~11月4日@下北沢小劇場 楽園

 

演劇に出会った理由は「コミュニケーション」

▲髙倉の人生を変えた、「演劇で学ぶコミュニケーション力」の授業

Q.演劇を始めたきっかけは何だったんですか?

演劇を始めたきっかけというか、原因みたいなものは高校時代にまで遡ります。
それなりに充実した学生生活を送ってきたんですけど、高校では多くの挫折を味わうことになり苦しい三年間を過ごしました。何に挫折したのか詳しく話すと長くなってしまうんですけど、部活動、勉学、人間関係のいずれも失敗を繰り返しながら自信を無くしていきました。最後は人の目を見て話すことすらできない有様で、自分が分からなくなってしまいました。
何とか卒業までこぎつけたんですけど、進路選択でとても悩みました。進学するにしても就職するにしても、きちんと人と向き合えなければうまくやっていけないことを自分でもよく分かっていたんです。

そんな時に知人から、演劇の専攻学科がある短大を紹介されて、パンフレットに書いてあった<演劇で学ぶコミュニケーション力>という文言を見て入学を決めました。なので、他3人と比べると演劇を始めた時期も遅かったですし、最初は苦手なことを克服するために授業として演劇を習い始めたのがきっかけでした。演劇の楽しさも短大を卒業してようやくわかってきたって感じでしたね。

短大を卒業した後は四年制大学に3年目から編入して2年間文学部にいました。短大の同期は卒業と同時に上京して劇団の養成所に入ったりしてたんですけど、僕は上京にまで踏み切れず、就職を前提に大学への編入を選んだわけです。

大学に通っている間も市民劇団に入って演劇欲を満たそうとしていたんですけど、それでも物足りなくてもっと濃密な演劇をしたいと思った時に上京してプロを目指そうと思いました。そして、新国立劇場の研修所の試験を受けて入所しました。

短大で演劇の基礎的な勉強をしていたとはいえ所属していたのはミュージカルを専門に扱っている学科だったので、ストレートのお芝居をしっかり学んだのは研修所に入ってからですね。

人々が求める「変わりたいという想い」これを演劇が叶える

▲演劇を通じて人は変わる。自身の体験を語る髙倉

Q.最初は人と話すことも難しかったのに、今はたくさんの人の前に立って「役者」をしている。ここには、どのような変化があったのですか?

演劇を始める以前、僕は自分が嫌いでした。今も、自分自身でどうにかして変わりたいと思っています。誰にでも変わりたいって願望はあると思うんですけど、僕の場合はその願望と演劇を始めるきっかけが偶然一致して、演劇を使って自分を変えたいと強く求めたんだと思います。

結果として自分が少しずつ変わったのは確かなんですけど、人とコミュニケーションをとることへの劣等感はどうしても拭いきれていないのが現状です。それが演劇を続ける上でのある種の原動力になっていますね。もちろん演劇が楽しいからやっているという面もあるんですけど、どこか本能的に「自分を変えたい」という衝動は、最初から変わってないように思います。

演劇の面白い所って、人になりきることで自分が変わることを擬似体験できることだと思うんです。

実際に、アヴァンギャルド×コンプレックスでは「HUB」というイベントがあるのですが、
そこでは参加者の方に事前にこちらで準備した履歴書をお渡しして、当日は履歴書の人物として会場に来ていただきます。そしてイベントの間はその人物になりきって様々なテーマについておしゃべりしていただくんです。難しそうに聞こえるかもしれませんが、ごっこ遊びのように気軽な感覚で参加していただいてかまいません。演じることの面白さはごっこ遊びと同じようになりきるところにあると思うんです。ただ自分とは違う人物として周りの人達と会話する。その新鮮さを楽しむだけでいいんです。また、とても面白いのが、自分とは違う人物として話していてもその中には自分の価値観や意見が少しずつ滲み出て来ることです。他人を演じる中で自分でも知らなかった自分の価値観に気づかされることもこのイベントの醍醐味の1つだと言えるでしょう。
是非より多くの方に参加していただきたいですね。

演劇と一般世界の「橋渡し」でありたい

▲髙倉の愛用するオカリナ

Q.髙倉さんは俳優の仕事以外に、声のお仕事もされているそうですね?

はい、声の仕事もさせていただいています。
声の現場と演劇の現場って全く勝手が違っていて最初はとても戸惑いました。演劇は1ヶ月かけてじっくり作品を作っていくのですが、声の収録は1週間前に台本をもらって当日の数時間の収録で作品を仕上げることになります。ですから現場でじっくり演技を練り上げるというよりも、準備段階で様々なものを用意しておいて短い収録の中で最も良いものを提示することになります。よく先輩の方からリテイク(やり直し)は2度目でOKもらえないと次は呼んでもらえないといった話を聞くので、現場に行くととても緊張してしまいますが最善のパフォーマンスができるように尽力しています。

Q.趣味でピアノとオカリナを演奏されるそうですが、どういう経緯で始めたんですか?

ピアノは小学一年生の時に習い事で始めて高校一年生の頃までやっていました。高校で部活にのめり込んでやめてしまったんですけど、弾くのは今でも好きです。舞台上で弾く機会があったら挑戦したいですけど、緊張しそうですね。
オカリナは2年ほど前から独学で始めました。ピアノの他にも何か楽器が演奏したいと思っていて、ピアノは場所を選ぶというか、どこでも演奏できるものではないので持ち運びができる楽器にしようと考えて前々から気になっていたオカリナにしました。オカリナの音色自体は始める前からとても好きで、あの澄んだ音色を自分で響かせられるのは気持ちがいいですし楽しいですね。

Q.今後演劇やその他の仕事とどう関わっていきたいですか?

自分にとって表現というものは、演劇という媒体だけに囚われているものではないのだと研修所時代から思っていました。アヴァンギャルド×コンプレックスは演劇を主としているけれど、強いて言えば自分は声を使う仕事だったらこだわらないとさえ言えますね。

もちろん、演劇がしたいからこの団体にいるのは確かですけど、他の声を使って物語を伝える仕事、例えば朗読とかも好きですし、声を吹き込む仕事だって好きです。自分のやりたい仕事の範囲が思っていたより広くて実際にそれを仕事にすることができる実感を得られたのが研修所を卒業してからの2年間で、今後も声を使って幅広く表現の仕事に関わっていければと思います。

アヴァンギャルド×コンプレックスでは、僕は他のメンバーよりも演劇経験が浅いんですけど、それって演劇界の価値観に浸かりきってないということだと思っています。

演劇界ってすごく特殊で、演劇を知らない人からすると閉鎖的というか敷居が高いイメージがあるんですよね。近年では世の中に娯楽が溢れていてネットはもちろん動画配信サービスが普及したこともあって家にいながらいくらでもエンターテイメントに触れることができるようになりました。
演劇は生ものなのでその時その場所でしか感じられないことが醍醐味でもあります。でもそれって醍醐味以上に時間と場所を制約されるって意味合いの方が強くなってしまっているとも思うんです。
だから、一部の好事家達がニッチに通ってゆく娯楽になってしまっているという現状があります。

アヴァンギャルド×コンプレックスを見に来てくれている人たちは、むしろ演劇を普段見ていない人達にもぜひ来て欲しいですし、自分もそちら側でありたいと思っています。両方の間に立って、橋渡しの役割でありたいですね。

「冬のサボテン」への意気込み

▲冬のサボテンでベーヤンを演じる髙倉

Q.「冬のサボテン」への意気込みを聞かせていただいてもいいですか?

「冬のサボテン」という作品は、面白い戯曲だと思うのと同時に、とてもハードルが高いものだとも感じています。初めて読んだ時に団体の旗揚げ公演としては素晴らしいと思いつつ、果たしてこれをやれるのかと不安もありました。

男性のことを恋愛対象として好きになるという感覚自体が自分にはないものなので、その感覚をどう掴んでいくのかが難しくもありやりがいでもあると思います。
また、戯曲がとてもリアルに描かれている分、本当に丁寧に作っていかなければ嘘っぽくなってしまうという難しさも感じています。

でもこのメンバーだからこそできる作品なんだとも思っていて、この場だからこそ自分は言いたいことを言い合いながら作品を作ることができるし、今回演出家がいないということもあってみんなで話し合いつつ自分はどういう作品にしたいのか主体性を持ってじっくり向き合いたいと考えています。

普通にやればそれなりに良いものができるとは思うんですけど、この作品をやるからにはそこで留まるわけにはいかないとも思っていて、どのようなレベルまで仕上げられるのかとワクワクしています!

 

第一回公演の情報はこちらから↓↓↓

COUPLES 冬のサボテン

SPECIAL

特集一覧