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手紙

温度が命。

私、岩男海史は手紙を多用する。

主な用途としては公演案内が7割、仕事依頼が2割、ラブレターが1割だ。

基本的には「メール<電話=手紙<直接」という順序で伝わる熱量とその正確さがあると思っている。なるべく会いたいのだ。しかし、時にこの「てがみ」というやつは電話はおろか、直接会うことに勝るくらいのパワーがあると信じている。

その一つに、「電子が混ざっていない」ということがある。我ながら物凄いオッサン臭い考えだし、「電子」という表現の稚拙さに低学歴丸出しだが、そこは許して頂きたい。

戻ろう。

手紙には「電子が入ってない」のだ!!

メール・LINEなんて言語道断。大切なことを伝えようとして上手くいった記憶がまるでない。表現の幅は狭く、絵文字やスタンプというアイテムがより表現の逃げ道を作り、真剣さを伝えることが「冷たさ」として伝わってしまう場合もある。既読なんて機能をつけたもんだから謎の駆け引きが生まれ、心の奥底に達するまでに途轍もない量のノイズが阻む基本的にはめちゃくちゃ便利でものすごく助かってます作ってくれた人天才だと思います敬服。。。

 

また、昔ラジオで「電話の声は2000通りの中から”イチバンその人に近い声”が出ている」というのを聞いたことがある。当然今はもっと繊細な差異を付けているだろうが、根本的にはアタリだろう。100%その人の声なわけがない。さらに、恐怖のスピーカー機能は”その話題の重要性”を全く共有できなくさせる。現に忙しい時は何か作業しながら通話が出来てとても便利です、はい。また、熱くなって大きな声で向こうが話しかけると確実に音量を小さくする。電話もメールほどではないが、やはり温度を感じるには若干足りぬ気がする。

(いうまでもないが、メール・LINE・電話に適した情報交換は絶対にあって、スピード感を含め、そこに関しての不満は一切ない。)

なぜ手紙に固執するかと言うと、

自分が貰って嬉しいからだ。

もっと厳密に言うと、嬉しかったからだ。

貰った手紙入れ(要新調,,)

「年賀状のやり取りするの岩男だけだよ」とたまに言われる。

基本的に鬱陶しそうな物言いなのだが、若干嬉しそうだ、、、、と、思いたい。

当然だ。手紙は面倒臭い。

手間がかかる。時間がかかる。金がかかる。最悪だ。

しかしソレこそが現代人がイチバン避けたがり、同時に手放してきたものだと思っている。

変な話だが、じゃないと演劇が面白いなんて思わない。

 

僕が持っている手紙入れには、今まで貰った最高に暖かくカッコいいものが詰まってる。

私ごとだが、メンバーの永田にパソコンスキルを付けるべく僕の10年製のMac bookを譲った。(無料で渡すとやらないので、少額で)そして僕は自身のデータをHDにバックアップして、父が長く使ってない11年製のお古を譲り受けた。しかし、そのHDもお古だったようで、連絡先データが全然移っていない。。もちろんソレに気づいた時は旧友の頭は空っぽで永田になついている。。。

と言うことで、約500件の連絡先データは忘却の彼方。。年賀状や手紙をひっくり返して住所を漁るのであった。

そこで今まで貰った手紙ほぼ全てに目を通した。

 

手紙の表現は無限だ。

 

とある大親友の年賀状は「去年の自分が最高にかっこよかった瞬間」をコラージュしてイケイケアツアツだ。またとある同期の年賀状は彼女の天才的イメージでその年を版画?で表現していてチョーカッチョイイ。また、僕の敬愛する俳優、新納慎也さんの年賀状は爆発的に面白く、毎年コレクションしている。

僕が言える事ではないが、字が綺麗な人、汚い(味がある笑)人。。その全てが愛おしい。

僕は小学校時代サッカークラブに入っていて(コロコロに太った無能DFだった)、その時コーチをしてくれていた人の中に自閉症のお兄さんがいて、僕は未だに毎年その人と文通をしている。書いてる最中に何度も間違えてしまうのだろう、毎回修正液がモリモリすぎてまるでレリーフの高級紙のようになっている。そのモリモリを触ると、その手紙を書いた数年前の彼と会話できるような気がしてくる。

 

そしてその手紙入れの一番奥には、僕が初めて女性から貰った手紙がある。

ああ、、気色悪い。が、大切な事なので。

ソレは16歳の時に恋していた年上女性から貰ったものだ。

僕は高校1年生。相手は幾つか忘れたが、大学生。僕の学校が終わって衣裳のバイトがないときはソソクサと大学の校門まで行ってずっと彼女が出てくるのを待っていた。待ち合わせではない。その日登校しているかも知らない。とにかく会いたかったのだ。しかしその大学は女子校で、校門前でソワソワしながら立ってる”おでんくん”を警備の男性が見過ごすわけもなく、、毎回ネズミのように追い払われていた。

結果から言うと、その女性には恋人が居て、今思えば僕のことなどあまり相手にしていなかったと思う。しかし何度も向き合ってくれて、暴走する僕の恋心を受け止めていた。年の差は少ししかないが、”クレヨンしんちゃん”と”ナナコお姉さん”の関係だ。

そう、その手紙は「物凄い愛情たっぷりのお断り」の手紙なのだ。手紙は当時の僕の涙でガザガサで、文字が滲みまくっている。その涙は、今思い出すに「悲しさ」ではなく、「嬉しさ」だった気もする。

なんとも思い出し難いが、僕はその手紙から、手紙はイエス・ノー以外のものが表現できることを教わった気がする。

やや、まあ内容は完全に「ノー」なのだ。きっと僕が感じた「イエス」は、温度だと思う。

あまりに温かい。もちろん人肌や会話には劣るが、こうも温度が物体に宿るものかと驚かされた。

それ以来、僕は手紙の価値を大きく見直した。

僕はこれからも多くの人の温度を物でも受け取るのだと思うと多少の手間や時間は問題ではないのだ。

 

 

渡す側へ。

上の写真は、僕のここ最近の手紙デザイン。先述の通り、主な手紙の用途は「舞台告知」だ。

この舞台告知がなかなかの曲者。

きっとダンサーやバンドマン、芸人さんなども共通のアルアルだと思うが、我々はすぐ告知野郎に成り下がってしまいがちだ。かなり親しくない限り、その人と会う回数よりも告知する回数の方が遥かに多くなる。

僕は18~22歳の4年間で20本以上の舞台に出演したが、まさに多くの人にとって告知野郎だった。しかしこちらは「素敵なお知らせ」を出しているつもりだし、現に見に来て損がないように日々稽古をして作品のクオリティをあげている。さらに言うとノルマの有無はあれど若手俳優にとって”何枚売るか”は次の仕事に繋がるかの大きな要素だったりする。だから告知をあまりに減らす事も出来ない。。行き詰まりを感じていた。

 

新国立劇場演劇研修所に入り、2年間はパンパンに授業。当然外部出演も一切禁止なので、告知に関して悩む事はなかった。

そして3年目になって、いわゆる「卒業公演」のようなチャンスがやってくる。久々の告知だ!

 

そうだ!手紙だ!!!

 

全く持って新しいアイデアではない。

しかし、ただでさえ「温度」にうるさい男が研修所で学んだのが「温度」だ。暑苦しい事この上ない。

「温度を伝える演劇の告知に温度がなくてどうする!!」

そう思い、年間5本以上を4年間やって来た男の2年ぶりの舞台。男は気合入れまくりで、よりこちらの想いが伝わる万年筆を購入。

300人以上にチラシと直筆の手紙が入った封筒をこしらえた!!

 

 

死ぬ。。。

「二度とやるか。」そう誓った。

かかる時間は山の如し。注ぐ労力は海の如し。費やす金額は天空の如く高し。。。

その割に一人に対する手紙のボリュームはちょっと凝った年賀状レベルだ。割に合わなすぎる。

 

そうして考案したスタイルがこちら。

 

元気イッパイ"A3"フルデザインスタイル!

上:ハダカ座「ストリップ学園」 下:新国立劇場「赤道の下のマクベス」

 

先述の「素敵なお便り」感に全重心を置いてみた。

この作業は地になるプレートを作るのにかなりの労力がかかるが、それさえ完成すれば後は簡単だ。

全くのコピーのみはいくら何でも寂しいので、空いたスペースに相手方のお名前を直筆で入れさせて頂く。

これが今僕が考えうる「温度」を最も伝えられる方法だ。

しかも稽古が始まる頃に制作するので、自分にとっての作品のイメージと向き合うので、作り手としてもとても良いのだ。

おわりに

僕の家族は中々に年賀状に拘るタイプなのだが、すでに長くなってるのでそれはまた年末にでも。

 

手紙は本当に面倒くさい。

いくら全編手書きをやめたとはいえ労力や時間はとてもかかるし、お金に関しては変わらずかなりの金額だ。さらに当然受け取る側にも多少多くのアクションを要求し、メッセージもメールより遥かに強烈だ。現に「うざいから要らない」という声もいくつか頂いているし、そう思った人は直ちに伝えてほしい(なるだけ優しく、、)

 

この手紙スタイルになって、自分勝手だと思うが若干”告知野郎の後ろめたさ”のようなものが減った。きっと、ほんの少しだけその人と「会ってる」感覚だと思う。もちろん返事がない事は多いが、きっと開いて一読してくれてるとは信じたい。この時間を通して、労力を通して物体を通してちょとだけ会話している。そんな力が手紙には残ってる。

 

だから皆さんも、大切なやりとりは是非手紙をお勧めします。こんな時代だからこそ。

(というか手紙ユーザーが少なすぎて切手の値段がどんどん上がってる。止めな、、、)

 
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