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いつの日か矢太郎を…

芝居作りは根気よく、妥協なく

今月、僕は新国立劇場演劇研修所14期生(1年次)の初シーンスタディ「宮城野」(作:矢代静一)に混ぜていただき、全5回の授業・発表を無事に終えた。

担当してくださったのは鐘下辰男さん・亀山ゆうみさんのタッグである。10期修了の我々アヴァンギャルドチームは2年次の夏休みに同タッグで1ヶ月間みっちり<愛とはなんぞや>ということを教えていただいた。その時は「紙風船」(作:岸田國士)を全編上演させていただいた。

今回は授業数が少なかったこともあり、シーンを抜粋して、お客さまに観ていただいた。

<「宮城野」の簡単なあらすじ>

江戸時代末期の天保8年(1837年)の秋。麻布の岡場所(花街)で女郎勤めしている宮城野の元に、伝説の浮世絵師 東洲斎写楽の弟子 矢太郎が訪ねてくる。実はこの矢太郎、東洲斎写楽の偽絵師であり、日々、師匠の浮世絵を模写していたのである。

しかしそんな折、矢太郎はとある理由から師匠の首を絞めて殺してしまう。

師匠の孫娘 おかよは矢太郎と駆け落ちをすべく、宮城野の元を訪ね、矢太郎が師匠殺しをしたこと、そして駆け落ちの算段を伝え、去っていく。

かつて行き倒れになっていたところを矢太郎に救われた恩がある宮城野と捕まれば死刑待ったなしの矢太郎。お互いの思惑や愛が交差する男女の会話劇である。

戯曲を読むなら、一人より二人!

シーンスタディが始まる前に二日間、同期の田村彩絵に協力してもらい戯曲の読解を行った。もちろん戯曲読解は一人で黙々とやることもできる。しかしやはり声に出して実際に読んでみると分かることがたくさんある。信頼のできる同期がそこにいるという安心感はやはり良い。ただ漠然と一人で準備するよりも、よっぽどメリハリのある準備をすることができた。感謝!焼肉をおごった!笑

ついにシーンスタディ開始!

そして鐘下さんの戯曲読解に震撼!

僕は、正直、今回「宮城野」を熟読しているという自信があった。しかし鐘下さんの”読み”は優にそれを超えていた。「紙風船」をやってもらった時と同じような衝撃を受ける瞬間もあった。

しかし今回、矢太郎という役に関して言えば、最初から最後まで、作中で矢太郎が一番大事にしていること・目的を変えることなくやりきることが出来た。むしろ戯曲をどんどん読み進めていく中で、その目的がどんどん深化していった感覚がある。このことは僕にとって自信にもなったし、自分が戯曲と向き合うに当たって、やるべきことが出来ているという再確認にもなった。

そして今回、再び実感したのは、戯曲をとにかく読解しまくることは大前提でありながら、実際に演じる上で、その読解をどこまで捨て切れるか、どこまで思考に頼らず、身体で、外からの情報で、他者からの影響で芝居ができるか、ということ。とにかく今!今!今!今、相手がどうなってるのか?そのことに尽きた。

今の僕は、”陰の天才芸術家 矢太郎”を最後まで演じ切りたい。

いつの日か、鐘下さんの演出で矢太郎を演じられるように今後とも精進していく。

新国立劇場演劇研修所14期生の皆様、鐘下さん、ゆうみさん、今回、僕を呼んでくださった高瀬さん、そして「宮城野」を目撃してくださった皆様、本当にありがとうございました!

いよいよ3月はアヴァンギャルドが本格始動しますよ!

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